脂肪腫(リポーマ)とは

脂肪腫(リポーマ)とは

脂肪腫(リポーマ)とは脂肪細胞の良性腫瘍であり、脂肪の塊が皮膚の下にできていますが皮膚と癒着はしていません。極めてまれですが悪性の脂肪肉腫のことがありますので、早めの受診をおすすめします。
触れるとしこりを感じることが多いため粉瘤(アテローム)と似ていますが、脂肪腫は化膿することはなく、悪臭を生じることもありません。

脂肪腫の原因

成熟した脂肪細胞は増殖しませんが、成人しても毛細血管の周囲には増殖能のある未分化の脂肪細胞がたくさん残っていて、その未分化脂肪細胞の異常が脂肪腫の発生に関与していると考えられています。脂肪腫の約80%に染色体異常が見られるため、それが未分化脂肪細胞の分化と増殖を起こしているのではと指摘されていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。

脂肪腫の症状や種類

皮膚のふくらみ、しこりを感じますが、皮膚には変化がありません。皮膚は表面から、表皮・真皮・皮下脂肪組織、そしてその下には筋肉や骨があり、脂肪腫の多くは皮下脂肪の下という皮膚の深部にできます。一般的な脂肪腫では痛みを起こすことはありませんが、血管脂肪腫では軽い痛みを生じることがあります。サイズは1㎝程度のこともありますが、10㎝を超えることもあります。
粉瘤と比べるとしこりに弾力があり、深い位置にできる傾向があります。また、粉瘤のように炎症や悪臭などを生じることはありません。脂肪腫も放置すると大きくなる傾向があり、自然治癒せず治療には手術が必要です。大きくなってしまうと適切な治療を受けても手術の跡が残りやすくなるため、早めの受診をおすすめしています。

脂肪腫の種類

臨床的な分類と、摘出した脂肪腫の成分によって分けられる病理学的分類があります。

臨床的分類

びまん性脂肪腫症

全身の皮下組織に加え、筋肉内や内臓に生じることもある脂肪腫です。2歳以下の乳幼児がまれに発症します。

良性対側性脂肪腫症

頚部、体幹、四肢の左右対称に発生する珍しい脂肪腫で、多発することもあります。過度なアルコール摂取を行っている方の発症が多いとされています。

表在性皮膚脂肪腫性母斑

真皮内に入り込んだ脂肪組織が真皮細胞に置き換わってしまっている状態です。単発型もありますが、やわらかい大小の結節が多数できて皮膚表面が大きく盛り上がることもあります。おしりや腰、大腿などに生じやすい傾向があります。

病理学的分類

血管脂肪腫

一般的な脂肪腫と同じく良性腫瘍ですが、血管を多く含んでいます。大きさは1㎝程度が多くなっています。軽い痛みをともなうことがありますが、治療は一般的な脂肪腫と同様です。

線維脂肪腫

一般的な脂肪腫で、膠原線維に富んでいます。圧のかかりやすい首の後ろや背中にできるケースがよくあります。

筋脂肪腫

線維脂肪腫に比べると深い場所にできる脂肪腫で、筋肉内にできることもあります。首の後ろにできやすい傾向があり、大きな切開を行う必要が生じる場合も少なくありません。

脊髄脂肪腫

皮下と連続した脂肪組織が脊椎管内に入り込んでしまう脂肪腫で、先天的な潜在性二分脊椎によって生じます。胎児期に背骨の骨が癒合できずに2つに分かれてしまい、それによって肛門の上あたりに脂肪腫ができます。排尿・排便障害や神経障害を起こす可能性があります。状態によっては成人してから発症し、発見されることもあります。

多型性脂肪腫

脂肪腫内にさまざまな細胞が存在する、まれな脂肪腫です。

脂肪腫に似ていて鑑別が必要な疾患

粉瘤、ガングリオン、脂肪肉腫、外骨腫などは脂肪腫に似た症状を起こすことがあります。また、脂肪肉腫といったまれに悪性のものが存在する疾患にも似ています。皮膚に触れてしこりを感じる場合にはできるだけ早く受診してください。

脂肪腫のできやすい場所

身体のどこにでもできる可能性がありますが、首、肩、背中にできやすい傾向があります。四肢や臀部(おしり)にできることもよくあります。

脂肪腫の発症時期

幼少期にできることが多いのですが、大きくなるのにとても時間がかかり、成人してから発見されることが多くなっています。特殊なものを除き、40~50代の発症が多くなっています。

発症リスク

男女では女性の発症が多く、肥満していると発症しやすいとされています。

発見のきっかけ

ほとんどの脂肪腫は触れた際にやわらかいふくらみや、しこりとして感じて発見されます。放置すると大きくなる傾向はありますが、かなりゆっくりとしたスピードで大きくなります。急に大きくなった場合には悪性腫瘍の可能性がありますので、一刻も早く受診してください。

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